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管理人「名古屋弁の構造」
 昔、「名古屋弁護士会」というのがあった(今は愛知県弁護士会という)。名古屋弁を護る人たちの集まりかと思った。(ウソです)
 ご当地名古屋の方言「名古屋弁」についてあれこれ書いてみました。
 最近、某名古屋市長によって、本来の名古屋弁が持つ柔らかさや優雅さは歪められつつあります。
 (ちなみに名古屋弁では「カワムラ」という姓の人のことを「けぁーむら」さんと呼ぶ)
 戦後育ちの名古屋人には、本来の名古屋弁は無理からぬことかも知れません。
 その市長だけの責任ではないとは思いますが、本来の名古屋弁を少しでも残したくこのページをつくりました。
  目  次
はじめに
1 名古屋弁の特徴
 ア 言葉(単語)自体の違い
 イ アクセントの違い
 ウ 発音の違い
 エ イントネーションの違い
 オ 絶滅した「なも」「えも」
2 名古屋弁の地域
3 名古屋弁の敬語・ていねい語
 D 目下
 C ちょっと目下
 B ちょっと目上
 A 目上(俗に上町言葉と言われるもの)
 <<比較例>>
4 名古屋弁による「父帰る」
5 典型的な名古屋弁による会話例
はじめに  誰だったか忘れたが、著名な歴史学者(たぶん故網野善彦氏)の本の中の話に、 「日本全国の古文書を調査して歩いたが、ある地方の旧家当主の話し言葉から突然 気がついたことがある。その当主の言葉は方言が強くてよく理解できなかった。  しかし、そこの土蔵の古文書はすらすらと理解できた。それまでは気にもしていな かったが、書き言葉には方言がないということに気づいた。」(意訳要約) と、あった。  逆に言うと、方言を書き言葉で表現するのは難しい。方言は口伝である。  ラジオ、テレビが普及し、正当な名古屋弁を話せる人はもういないかも知れない。  私の祖母は、明治末期の中区大須生まれ、育ちであった。そのあたりの人が最終 かも知れない。できるだけ残したいものだ。 1 名古屋弁の特徴   地方方言を区分するには、いろいろな分類のしかたがある。    ア 言葉(単語)自体の違い、 イ アクセントの違い    ウ 発音の違い、      エ イントネーションの違い  たいていはこれらの総合的なもので区分される。  ア 言葉(単語)自体の違い    これはもっともわかりやすいもので、方言というとこのことをさすことも多い。    名古屋弁では、「まぶしい」ことを「ひどるい」、「ひどろい」と言う。    (正確には「ひどりぅぃ」と発音する。Rの子音はIとUの中間)    他の方言同様に、ほかにも多数存在する。   <例>    いんちゃん(じゃんけん)、しょうや(メンコ)、もちゃがる(からまる)、    おそげぁー(恐ろしい)、う(ぐ)ざる(叱る)、まわし(用意)、まっかしけ(まっ赤)    しょびつる(吊り上げる)、あぶつ(盛んに動かす)、きーない(黄色い)、    たぼける(とぼける)、おちょける(ふざける)、ぼっこ(くず)、どべ(びり)、    し(ひ)とねる(育てる)、ぼう(追う)、そそくう(繕う)、ばりかく(ひっかく)、    しきしょ(つぎあて)、でんち(ちゃんちゃんこ)、きむ(も)い(サイズがきつい)、    つねくる(つねる)、おがらかす(いやがらせする)、げぁーろ(がいろ、蛙)、    もっさい・もっさらこい(貧弱、小汚い)、こうれぁ(こうらい、トウモロコシ)、    かんす(蚊)、ねぶか(ネギ)、あいさ(間)、はさける(挟む)、いごく(動く)、    のーなる(無くなる、亡くなる)、おでぁー(富裕名望家)    擬態語     ときとき(物が尖っている様)強調:とっきんとっきん     ちんちん(お湯が熱すぎる様)強調:ちんちこちん     ぼかぼか(物が暖かい様)  強調:ぼっかぼか     だあだあ(物が漏れる様)  強調:だあだかだあ    と言っても、名古屋独自の言葉は少なく、名古屋弁と思われてもたいていは   全国語古語の名古屋流音便により発音・アクセントが変わったものが多い。   <例>    だちかん(埒あかん)、ごがわく(業がわく)、もーやーこ(舫いこ)、    ふきの(ふきぬの)、とんも(田面)、はば(端場)、あぬく(仰く)、    おそげぁー(怖気)、あだに(異に・ことのほか)、だだくさ(乱雑・粗末)、    ちょうらかす(調略さす・騙す)、(ど)荒けねぁー(荒けない・甚だしい)、    わや(わやく)、つくなう(蹲う・しゃがむ)、ずつない(術無い・苦しい)    また、武家言葉、仏教用語等、畏まった言葉を日常的に使うことも多い(かった)。   <例>                   ^^^^^^    ご無礼します、ごてぁーげさま(ご大儀様)、かんこー(勘考)する、    てぁーもねぁー(態もない)、するとせぁーが(と際が)、いざる(躄る)    ちょーすぃーとる(調子ついてる)    ちなみに、名古屋弁の代表として「やっとかめ」がある。    <例>「やっとかめだなも、元気でやってれぁーたけぁーも。」    「八十日目」と書く、という解説書もあるが、間違いである。    「やっと会えた」の"やっと"(多いの意もある)であり、「いつか、どこか」   の"か"で不定を表し、「ひどいめに遭う」「返り討ちのめに遭った」の"め"で   状態を表す。    「やっとか会えなかった」、「やっとかのめで会えた」の意味である。  ◎ 名古屋人が「標準語」と思っているが、実は名古屋弁である方言がある。    「みえる?」  :<例>「○○さん、いらっしゃいますか?」             名古屋弁「○○さん、みえますか?」    「〜だで、○○」:「〜だから、○○」             <例>「風が強いから、窓を閉めて。」             名古屋弁「風が強いで、窓閉めて。」  ◎ 比較的最近できた方言言葉に「ケッタ」(東京弁のチャリンコ)がある。   「蹴ったおし(蹴り倒し)マシーン」から出た言葉である。1965年(S.40年)ころ   にできた言葉と思われる。  イ アクセントの違い    言葉(単語)自体は他地方と一緒でも、アクセントの違いがある。         _―――_     _―___     ___――     標準語:ありがとう、東京弁:ありがとう、関西弁:ありがとう           __―__     名古屋弁は、ありがとう と、なる。    アクセントの違いで全く意味が違ってくる名古屋弁の例を挙げる。     ―_ __―_―     はよ、やってまえ。(早く、やってしまえ)※音便により"し"が消えたもの     ―_ __―――     はよ、やってまえ。(早く、やってもらえ)※音便により"もら"が"ま"に変化  ウ 発音の違い    "みゃーみゃー言葉"として、全国に知られた名古屋弁であるが、   実際には書き言葉では表現できない。     「やろみゃー」ではなく、「やろめぁー(:)」に近い。   端的に言えば、長音はあいまい母音で伸ばすと言うことであろう。    「あー」は、えぁー。「いー」は、えぃー。「うー」は、いぅー。    「えー」は、いぇー。「おー」は、うぉー。   に発音は近いが、前後の言葉によっても微妙に違ってくる。    また、「あい」「あえ」の発音はほとんど同じ、発音記号の「æ」   がもっとも近い。     試合(あい)→「しえぁー」、味噌和え(あえ)→「みそえぁー」     司会(かい)→「しけぁー」、帰(かえ)っていく→「けぁーてく」     大概(がい)→「てぁーげぁー」、着替え(がえ)→「きげぁー」     舞台(たい)→「ぶてぇー」、 手応え(たえ)→「てごてぇー」     最(さい)近→「せぁーきん」、○○さえも→「○○せぁーも」     商い(ない)→「あきねぁー」、お供え(なえ)→「おそねぁー」     気配(はい)→「けへぁー」、 蝿(はえ)→「へぁー」     一枚(まい)→「いちめぁー」、この前(まえ)→「このめぁー」   (標準語)書かなくてはいけないのなら、書いて帰って行きなさい。   (名古屋)かかなかんなら、けぁーてけぁーてけぁー。  エ イントネーションの違い    アクセントとイントネーションの違いは微妙であるが、イントネーションは   文章全体の流れの調子と言っていいだろうか。    同じ文章を読んだとしても、そのイントネーションにより名古屋出身者はす   ぐに分かる。    名古屋出身者には英語のような抑揚があり、リズムが他の地方より強い。    (東北弁にもその傾向がみられる)   「明日の天気予報をお伝えします。名古屋地方の明日は、晴れのち曇り、夕方から雨でしょう」    ・標準語イントネーション(.wav約400Kb)    ・名古屋弁イントネーション(.wav約400Kb)   ※ ことに3拍目が上がる傾向がある。(まだ研究中)  オ 絶滅した「なも」「えも」    かつて名古屋弁を代表する言葉として君臨していた「なも」や「えも」は、   もはや絶滅した。今、この「なも」「えも」を使う人はいない。    1970年(S.45)頃は、お年寄りの人たちがまだ多少は使っていた。     「おーっ やっとかめだなも」、「どこへ行ってれぁーしてぁーも」    名古屋弁での敬語・丁寧語では、この「なも」「えも」がその優雅さの基   調となっている。   【なも】    この「なも」は、古い時代には全国に広がったことがある「なもし言葉」   の変形である。    方言には柳田國男が指摘した「方言周圏論」という説があり、文化中心点   (京都)からそこの新しい言葉が、時代を経て伝搬していくというものであ   る。    したがって、遠くの地域ほど同心円状に京都の古い時代の言葉が残ってい   るという説である。(あくまでも説でしかない)    40〜50年前までは、岡山県や愛媛県に「なもし」が残っていたが、名   古屋弁の「なも」同様に絶滅したようだ。     「きょうは寒いなもし」、「そりゃ、イナゴぞなもし」(坊ちゃん)    「なもし」は敬語であって、"な"と"もし"に分けられる。"な"は、今の   "ね"に当たる終助詞であり、"もし"は問いかけを表し、断定表現を和らげる   働きをする。    この変形に「なも」を始め、「なーし」「なし」「のもし」「のんし」など   がある。    これらは丁寧語、尊敬語であり、目下の者には使わない。   【えも】    「えも」は、「なも」からの派生語である。語尾の子音が"え"の場合に敬語   の"なも"をつけたい時には"えも"に変わる。      「こっちぃ来やーせ」⇒「こっちへ来やーせえも」    「えも」のもう一つの用例は、「ありがとえも」、「あのえも」である。    これは「ありがとなも」、「あのなも」とも言える言葉であるが、親しい間   柄におけるややくだけた表現である。    これは「ありがとね」「あのね」に「なも」言葉をつけたものと考えられる。   【余談】    「なもし」の「もし」は問いかけの言葉と説明したが、これは目上の人への   問いかけである。      「もし、そこの方!」、「もしもし、聞こえますか?」    これに対して、目下の者に対しては、「やい」が使われる。      「やい、てめー」、「するんじゃねーぞ、やい」    同僚など対等な関係では、「ほい」が使われる。      「ほい、これやる」、「わかったぞ、ほい」    東三河地方の方言で、語尾に「のんほい」つけることがある。      「うまかったのん、ほい」、「ようきたのん、ほい」    山の頂上では他の山に向かって「やい、ほーい!」と呼ぶ。?? 2 名古屋弁の地域   名古屋弁の地域はもちろん名古屋地方であるが、その範囲は    旧愛知郡(現名古屋市を含む)、旧海東郡、旧海西郡、旧中島郡、旧葉栗郡、    旧春日郡、旧山田郡、旧扶桑郡、旧知多郡北部  ぐらいであろうか。ほぼ旧尾張国全体である。   もちろんその中でも地域差はあり、微妙に異なっているし、逆にその周り地域  でも名古屋弁に近い地域は多い。はっきりと境界線を引くのは難しい。   旧知多郡南部は、かなり「三河弁」の影響が見られる。   旧三河地方は、「三河弁」と言われ、静岡県地域の言葉に近づく。   名古屋弁の最大特徴である"あいまい母音"は、かなり広範囲にみられ、旧中山  道沿いでは中津川市あたりまで、また飛騨街道沿いは高山市あたりまで発音さ  れている。   しかし、すぐ隣の三重県桑名市は完全に「関西弁」系であり、アクセント、発  音、イントネーションは全く異なる。木曽・長良・揖斐の大河三川が言葉交流を  阻んだものであろう。 3 名古屋弁の敬語・ていねい語   「名古屋弁」には、上町(うわまち)言葉と下町(したまち)言葉があると言われ  ている。上町言葉は非常に上品で言葉がきれい、下町言葉は粗野で下品とされ  ている。  (その分類で言えば、某名古屋市長の言葉は、典型な"下町言葉"である。)   しかし、その区域による分類は正しいのか。区域名をつけてしまうと名古屋弁  が地区によって2種類あると思われてしまう。   (同じ大阪圏でも「河内弁」は、粗野でキツイ言葉とされているのと同様)   これは、その地域で敬語、丁寧語をきちんと話せる人が多いかどうかである。  すなわち社会的階層が地域により偏りがあるということ。   下町でも、"上町言葉"を話す人は当然いる。   名古屋弁では、相手により4種類の言葉つかいがある。    D:目下、 C:ちょっと目下、 B:ちょっと目上、 A:目上   これは、あいまい母音とともに名古屋弁の最大特徴である。   (通常は、目下、同僚、目上、の3種類が多い)   ただし、CとBについては、話す内容により立場が逆転し、言葉つかいも  逆転することがある。   なお、概ね、男性はD〜B、女性はC〜Aを使うことが多い。したがって、  完璧なAは女性ことばと取られることもある。  D 目下    対象:自分の子供・生徒等にきつく言う時       知らない者といさかいになった時       統率、命令する時    ・「ここにすわっとれ」    ・「どくぉぇーいっとった」    ・「先生ござったか?」    ・「それはおぇーとけ」(やめておけの意)    ・「どうした」  C ちょっと目下    対象:自分の子供・生徒等にていねいに言う時       会社の後輩と話す時       近所の子供と話す時    ・「ここにすわっとれぁー」    ・「どくぉぇーいっとったの」    ・「先生ござらした?」    ・「それはおぇーとけぁー」    ・「どうしたの」  B ちょっと目上    対象:親と話す時       会社の親しい先輩・上司と話す時       近所の年配者と話す時       全く見知らない人と対等に話す時    ・「ここにすわっとってちょー」    ・「どくぉぇーいっとりぁーた」    ・「先生ござれぁしたけぁー?」    ・「それはおけぁーせ」    ・「どうせぁーた」  A 目上(俗に上町言葉と言われるもの)    対象:会社の重役等と話す時       保護者が学校の先生と話す時(最近のモンスターを除く)       見知らない人にものを頼む時       店に来た客に話す時       かしこまった場所で改まった会話をする時    ・「ここにすわっとってちょーでぁーせ」    ・「どくぉぇーいってりぇーしてぇーも」    ・「先生ござれぁーたけぁーも?」    ・「それはおぇーてちょーでぁーせ」    ・「どうかせぁーたけぁーも」  <<比較例>>  「ここにすわっていてください」    D「ここにすわっとれ」    C「ここにすわっとれぁー」    B「ここにすわっとってちょー」    A「ここにすわっとってちょーでぁーせ」  「どこへ行っていましたか」    D「どくぉぇーいっとった」    C「どくぉぇーいっとったの」    B「どくぉぇーいっとりぇーた」    A「どくぉぇーいってりぇーしてぇーも」  「先生はいらっしゃいましたか?」    D「先生ござったか?」    C「先生ござらした?」    B「先生ござれぁしたけぁー?」    A「先生ござれぁーたけぁーも?」  「それはやめておきなさい」    D「それはおぇーとけ」    C「それはおぇーとけぁー」    B「それはおぇーてけぁーせ」    A「それはおぇーてちょーでぁーせ」  「どうかしましたか」    D「どうした」    C「どうしたの」    B「どうせぁーた」    A「どうかせぁーたけぁーも」  「よく来てくれました」    D「ようきたなぁ」    C「ようきたねぇ」    B「ようこやーたねぇ」    A「ようこやーしたなも」 4 名古屋弁による「父帰る」   菊池寛による戯曲「父帰る」を名古屋弁にしてみました。 名古屋弁対訳「父帰る」 5 名古屋弁による会話例   典型的な名古屋弁による会話を創作しました。 名古屋弁対訳「七回忌法要」 <ほぼ完成としますが、少しずつ手直しすることがあります。>

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